知ってほしい、住まう家のこと

木を知りいかす。
木のすばらしさは
無垢の状態でこそ。

無垢の木の話

家工房の家造りには、数えきれないほどの木材を使用します。暮らしの中で日々目に映るところから、見えないところまで、その全てが何も塗装しない「無垢」の木です。現在、多くの建築の場面で使用される「木」は、そのほとんどが加工を施されています。つないで積層材、くっつけて集成材、つやを出し塗装してフローリング材、薄く切って貼って合板材など…、便利さを追求することで多くの材料が出来ました。傷がつきにくかったり、加工しやすかったり、反らなかったり、たくさんのメリットがあります。その便利さの一方で、この「加工」には接着剤やワックス、防腐剤や防カビ材など、さまざまな化学物質が使用され形を形成しているのです。化学物質が人にいい影響を与えないことはなんとなくわかっていることですが、さらに木そのものの力を全く無いものにしているということもお伝えしたいポイントです。
ヒノキ・スギ・マツ、サクラ・クリ・クスノキ・ケヤキ…、日本にはいろいろな木があり、それぞれに特性と持つ力があります。
たとえば柱は、上からかかる重量に耐え、揺れに対する強さが必要です。寒さと暖かさの気温差に耐え育ったヒノキは、力強く柱には最適な木です。
梁や桁などの横向きに入る材料には松が適しています。丸太のままの弧を描いた松は柔軟性に優れ、ねじりに強く地震などの大きな揺れから家を守ります。家の一番上の一番揺れる位置で家全体のねじりを受け止め、長い間家を守っています。
壁には杉が適しています。柱一本でビール瓶2~3本分の水分を吸うことができるといわれる杉は、湿気を吸ったり吐いたりする力に優れており、家の外壁で外部の湿気を、内壁で室内の湿気を調整します。室内の床から90センチほどのところは湿気がたまりやすいので、この位置まで杉で腰板をいれると室内が驚くほど快適になります。
他にも湿気に強くカビが生えにくいヒバや、傷がつきにくいサクラやケヤキなど、それぞれの持つ性質を最大限生かす使い方をすることで、木は長持ちし、家は快適に、結果として「家という財産」を健全に持ち続けることができるのです。この効果は、無垢の木ならではの効果で、加工をしてしまうと木々それぞれの良さがなくなってしまいます。
さらに、無垢のままの木はずっと生き続け、その効果が持続するのですが、育った環境とあまりにも差があれば死んでしまいます。外国の温暖な地域で育った木は、その地方でしか健全に生きられません。寒く厳しい気候で育った木は日本のような温暖な地方では生きられないのです。どんな地方で育って、どんな性質を持っているかを見極めることが大切です。
家工房の家はヒノキ・スギ・マツを中心に使用しますが、その全てに理由があり、さらに一本一本どこで育ったかを大切にしています。それらの材料を替えることはできません。お客様の大切な財産を守る為のこだわりです。

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家工房の家造りの根幹。
土壁には暮らしを
快適にする力があります。

土壁の話

家工房の家造りの中で無垢の木と同じくらい大切なのが土壁です。家を造り始めてからお引き渡しまで土壁の職人さんがずっと現場にいるくらい、土壁は数多くの工程と時間、職人さんの手間によって作られます。
柱と貫(11㎝以上の幅の木材を使用した柱と柱を繋ぐ材料のことで、木のクサビで固定される)に丸竹と平竹を組み合わせた土壁の芯になるものを、ワラ縄を使い細かく編みつけていきます。この土壁の芯の部分をコマイと言います。この工程が終わるとすでに一つ一つの壁が固定され、がっしりと力強くなります。その後ワラを細かく刻んで混ぜ込み、発酵させた土を丹念にコマイに塗りつけていき、これが荒壁という壁の芯になります。この後しばらく乾かし、中塗りと呼ばれる工程に入ります。中塗りは荒壁の上に、荒壁よりさらに細かいワラを練りこみ塗りつけます。この時点で壁厚は約9~10センチほどになります。最終的にこの表面に珪藻土などの仕上げ材を塗り壁が出来上がるのですが、長年にわたる使用に耐えるよう柱に溝をいれ、ここに土壁をさしこみ壁の端が柱から離れるのを防ぐ、といった細かい工程を経て土の壁が造られます。
多くの手間と時間を要し出来上がる土壁ですが、日本の環境の中で快適に住まうためにはなくてはならないものです。
現代の家造りの中で大半の住宅に使用されるのは「断熱材」です。安価で作業性の良い、グラスウールや発泡スチロールが使用されています。確かに断熱材は、数字の上では土壁と同じくらい断熱の効果があるとされています。しかしながら、温度以上に日本で暮らす中で考えなくてはならないのが湿度です。湿度はエアコンによって調整できると大半の人が知っていますが、考えなくてはならない湿度は室内の空気中の湿度ではなく、建物の内部、たとえば床下や外壁と内壁の間、天井裏も含めたありとあらゆるところにある湿気のことです。この場所に湿気が溜まると大切な建物の内部の構造材を腐らせ、その腐った部分にシロアリがわき、最終的には家が本来の強度をなくしていきます。
人間が生活していて湿気が多くて嫌だ…と感じる時期にはすでに建物は悲鳴をあげています。なぜなら木は湿気を吸うという機能があり、吸ったら吐かないといけません。しかしこの吐いた湿気の行き所が現代の建物には不足しているのです。構造材と隣り合わせにある断熱材は熱を遮断する力はあっても湿気を吸う機能はありません。壁の中や床の下でこの行き所の無い湿気が、木を腐らせていくのです。湿気は完全に遮断することができないので、対策をする必要があるのにも関わらず、現在の住宅では対策をほとんどしていません。しかし、断熱さえできれば良いという考え方は変わらず、湿気については触れられていないのが実情です。
日本の建築を考えるにつけ、やはり断熱は土壁しかない…と思う理由を紹介します。土壁となる材料には当初とんでもない量の水が含まれており、これが壁として家のそこかしこに施工され、人が住むまでの間少しずつその水分が減り乾燥し壁が出来上がります。この環境下で人が住むと湿気の多い4月から9月までは湿気を吸い、乾燥してくる10月からは自身が吸った湿気をまるで加湿器のように室内に排出します。それは、施工時に大量の水を含み、その水分を乾燥させている為、最初に含んでいた水分量までは湿気を吸い取ることができるということなのです。
実際に、夏の一番ジメジメし熱い日に土壁を触ると、たくさんの湿気を吸っているにも関わらずさらりとしています。さらに、その含んだ水分による気化熱によって、ひんやりしているのです。この作用で、土壁の家の室内は過ごしにくい夏の湿気た暑い日でも、エアコンを使わずにさらりと、そしてひんやりとしているのです。
単に「断熱が土壁」というだけの話ではなく、土壁を採用するには数々の理由と、どうしても譲れない住む人にとっての大きな価値があります。

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風を読み、家にもたらす。
家造りでとても
大切なこと。

風の話

建物の中を「そよ風」がさあっと通り抜ける、そんな言葉を聞いたとき、思い浮かぶのは高原のリゾートや、自然に囲まれた別荘、という方も少なくないと思います。でも風は、高原にも、森の中にも、そして街中や住宅街にも吹き渡っています。ではなぜ、家の中で風が通り抜ける、というイメージが浮かびにくいのでしょうか。それは現代の家造りにおいて、窓は最低限の光が入りさえすればよい、エアコンがあれば快適な空間を造ることが出来る、と考えられているからです。しかしながら、一年を通して人にとって快適で、かつ家をより良い状態で何十年も保とうと思ったときに、風を家に入れ込むことはとても大切なことです。
どこかしこに吹いている風ですが、意図的に入れようとしなければ、家の中に吹いて来ることはありません。風は春から夏にかけては東、もしくは南から吹くことが多く、逆に冬は西や北から吹いて来ることが多いです。風向きだけでなく、窓の場所や大きさ、家の角度、庭の作り方、近隣の道・住宅の状況などいろいろな面を複合的に考え家を造り上げることで、はじめて風が通り抜ける家になります。
夏の暑くジメジメした日には、木と土が湿気を吸い、断熱し、そして風が常に通り抜けます。扇風機の風に当たると涼しく感じるように、風が通ることはより涼しく過ごすために必要なことなのです。逆に冬の寒い日には、夏にたくさんの風をもたらしてくれた窓から風が入ることはありません。夏と冬とでは風向きが違うので、冬の風は建物で受け止めるように設計するからです。その結果、南側は太陽があたり(冬の太陽は低い位置から差し込むため、窓際は陽だまりになります)風が入り込まないのでいつもポカポカです。真冬に窓を開けて日向ぼっこができるのです。
木と土で造った家は何百年でも持ちますが、人といっしょで年月を重ねその姿を変化させていきます。少しでも長く家を生き続けさせるために大切なのもまた風なのです。夏は窓を開け吹いてくる風を家の中に入れ、冬は乾いた風を家にあてることで床下から家を乾燥させます。お風呂に入ったら窓を開け自然換気をし、湿気をできるだけ早くなくします。自然の中から生まれた木と土は、自分自身で湿気を吸ったり吐いたりできますが、家という形にその姿を変えたとき、こうした方法で少しだけ手助けをすることが大切です。
間取りを造るとき「意図的に風と共存する」ことを前提に考え、住まう人がほんの少しの手助けをすれば、一年を通して湿度と気温はコントロールできます。適度な温度と湿度に保たれた家では、一年を通じて湿気てしまうことがなく、家が乾いている状態になるのです。そうした家は薬品を使わなくても腐ることがないので、カビやシロアリなどの害虫の心配をすることがなく、何十年も健全に保たれ続けるのです。
家そのものが健全に保たれる環境であれば、人も快適で安心な生活が必然的に手に入る、当たり前なのに意外と気づかない大切なことです。風の利用は自然の力だけで家と人を守ってくれます。風を知り利用することこそ、家造りのもっとも大切なことだと考えます。

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暖かさだけでない
薪ストーブの役割

薪ストーブの話

家工房の造り上げた家の中には、ほとんどのお宅に薪ストーブの姿があります。エアコンやファンヒーターに頼らない、家と体に優しい暖房を考えると薪ストーブに行き着くからです。火を見ながら暖を取る生活は暖かいという実質的な効果だけでなく、人を心豊かにしてくれます。
昔はどこの家にも火はありました。囲炉裏だったりクドだったり…火鉢もそうです。この火は室内の汚れた空気を吸い込み、外へ排出するという役割も担っていました。さらに火を焚くことで、病原菌やほこり、カビなども殺菌することが出来ます。
嬉しいことに火は、遠赤外線によって身体を暖めてくれるので、身体の芯からぽかぽかとします。まるで温泉に入っているかのような心地よさを感じます。さらに、必要以上に室内を乾燥させないという長所も兼ね備えているのです。
薪ストーブの燃料は、建築の際に生じた端材や、間伐材、周辺の環境で伐採された木など、行き先に困った木々です。通常は「産業廃棄物」として棄てられてしまうのですが、木々を最後まで大切にし、活かしたい。こうした思いがあり、薪ストーブをお勧めしています。
日々の暮らしの中で、木々を家族みんなで協力して薪に変え、薪棚に並べ二年ほど乾燥させ、ようやく薪ストーブにくべます。エアコンやファンヒーターのように決して便利ではありませんが、炎の持つやさしいゆらぎは、見ているだけでなんとなくほっとし、癒されます。テレビやゲームで過ごしていた時間が薪ストーブの前で火を眺める時間に代わると、なぜだか自然と話が弾んだり、なんとなくいつものコーヒーがより美味しく感じたり、穏やかに過ごせているなと実感します。
火のある生活は、現代の当たり前に過ごしていた生活から比べれば、多少不便なことがありますが、それに負けないくらい良いことがたくさん詰まっているのです。

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家族を大切にしたい思いが
家工房の始まりでした

家工房がうまれるきっかけ

現代の家造りから、かけ離れたとも言える家工房の家造りとその暮らし。こここに行き着いたのにはもちろん訳があります。 今から30年以上も前の話になりますが、当時私はある工務店で働いていました。この会社で建築のいろはを学ぶことになるのですが、それと一緒に、現代の建築に違和感も覚えるようになりました。そのきっかけは、幼い娘を新築の現場に連れて行った時です。「お母さんのお仕事を見てみたい」そう言って喜んでついてきた娘が、現場に来て5分もすると「頭が痛い」、「気持ちが悪い」、「おなかが痛い」と外へ出て行ってしまうのです。来る前までどこも体調が悪くなかったのに、です。「何かがおかしい」と思い、担ってきた「新しい家」を疑うようになりました。
この時点まで使用していた建材に含まれる溶剤や防腐剤、床下の防蟻材、クロスの接着剤…あらゆるものの成分を確認し、さらに図書館へ行ってはそれがなにか、どんな効果や作用があるのか調べたのです。驚いたことに海外では使用できないもの、大量摂取を禁止する溶剤、ガスマスクなしでは取り扱いのできない薬品などが当たり前に使われていたのです。それぞれにもちろん役割はあるのですが、人の体内に入ったり触れたり、長年それの集合体の中に身をおいたときの作用までは触れられておらず、さらに消費者向けにそのような情報は流されていないことに恐怖さえ感じたのを今でも覚えています。
当時はシックハウス症候群、化学物質過敏症などといった症例は全く認知されておらず、症状の頭痛や吐き気、咳、倦怠感などをおさえる治療しかできなかった時代でした。この図書館通いのなかで『化学物質は命を脅かす成分までも含んでいるかもしれない』ということ、『家を造るにあたり現代の建築はこの化学物質なしに造ることは難しい』ということを学びました。
この後、『ホルムアルデヒド』というひとつの特定された成分だけは規制がかかり『F』という規格で規制されることになるのですが、化学物質の数は数百とも数千とも言われているのに、現在に至るまで『ホルムアルデヒド』以外の成分で規制の対象になっているものはわずか数種です。これらことに疑問を持ち、せめて自分の娘を育てる家だけは化学物質の恐怖の無い家にしたい、と強く思ったのが家工房の第一歩でした。 化学物質の無い家…、不可能に近い挑戦でした。柱には防腐剤、壁や扉、システムキッチン、洗面台あらゆるものに接着剤・防カビ材…、断熱材はグラスウールや発泡剤、フロアーにはコーティング剤やワックス、床下にはシロアリ防止の防蟻剤…、化学物質が無い建材はひとつも無かったのです。
しかし私の考えの根本は、『100年前の家にはそんなものは使ってないはずだ、絶対できるはず』でした。もちろん勤めていた会社ではこんな家造りは出来なかったので、会社をやめ、準備を始めました。
木は全て無垢のみ、集成材・積層材、ベニア・合板の類は一切使用しない、もちろんワックスやコーティングなども施したくありません。存在しないものは材木屋さんに依頼して一から作ってもらい入荷しました。床下など薬剤が必要なところは天然の柿渋を京都から取り寄せて使い(完全な天然の柿渋を作っているのは京都のトミヤマさんだけです)、外壁も木なので塗装は必要に応じて柿渋やべんがらなどを使いました。断熱材も使わないので壁には竹でエツロを組み、土壁を塗る。屋根には檜の皮をひき、土を載せ、いぶしの瓦をふせる。システムキッチンなどは合板や接着剤などが多量に使われているものが多い為、これらも全て一から大工さんに造ってもらいました。
こうした昔ながらの自然素材だけで進めた手探りの家造りは、完成までには2年の際月を要しました。長い時間を費やしましたが、「化学物質の無い家が造れるのだ」という私の自信もいっしょに出来上がり、この2年はその先の家工房の大きな財産になったのです。
このようにして出来上がった家は本当にすがすがしい空間になり、以前の会社の建築現場で出た、娘のあの症状も全く出ませんでした。そして長い歳月をかけ造り上げたこの家は、もうひとつの大きな収穫をもたらしました。それまで娘が今まで抱えていたひどい喘息やアトピーの症状もすっかり治まり、すくすく元気に育っていったのです。
このような家は、生まれたての赤ちゃんも安心してすごすことが出来ます。夏、開けっ放しの部屋の畳の上に蚊帳をつりその中でお昼寝をする。エアコンの空調などは要りません。汗をかけばお風呂に入る。皮膚の抵抗力も、体の抵抗力もつくられ冬も風邪などひきませんし、あせもの心配もありません。冬、エアコンやファンヒーターで暖かくしなくても土壁の家はあったかですし、湿度も適度に水分を放出している為、常に60~70%に保たれています。
科学的なワックスやコーティング材、防腐剤や防蟻剤などを一切使っていないので、少し成長しハイハイをするようになって、ハイハイし、そのまま手をお口にもっていっても心配する必要はないのです。
この家を皆さんに見ていただくことで、同じような悩みを抱えてみえた親御さんから「このような家を建てたい」というお話をたくさん頂きました。このようにして家工房が出来上がっていったのです。

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身近なあらゆるものが
危険をもたらしている
かもしれません

シックハウス症候群と化学物質過敏症

家の中の建材や家具などに含まれる接着剤や塗料、防腐・防カビ剤、防蟻剤などに反応し、頭痛やめまいなどの症状を起こすもので、ひどくなると家の中にいられなくなります。このような症状をシックハウス症候群と呼びます。
シックハウス症候群がひどくなった場合やシャンプーやリンス、歯磨き粉、台所用洗剤、洗濯洗剤、食品添加物などの化学物質を摂取し続けた場合、「化学物質過敏症」の症状が出てきます。個人差がありますが、体の容量に対して化学物質が満タンの状態を超えると発症するといわれています。科学物質は解毒できない為、どんどん体内に蓄積されていき、ある日突然症状が現れます。
呼吸困難、頭痛、めまい、吐き気など、ここまで症状が出始めると、科学物質のある場所での生活は困難です。ひどい方は野宿をしたり、まだまだ足りない化学物質過敏症の患者専用の施設に移ったりと通常の生活ができなくなるのです。
このような症状を引き起こす化学物質といわれるものは、本来人間を含めて動物・植物などと共生できるものでなく、さまざまな悪影響を心身に及ぼすということが最近わかってきました。
これを避ける方法は家の中のすべてのものに化学物質が混入されていない環境を整えることが必須ですが、現代において大変難しいと言わざる負えない現状があります。
家工房では家や家具、家の中で使われるシャンプーや洗剤などのすべてに化学物質を混入させない家造りと暮らしの提案を行っていますが、これも建築業界全体から見れば当たり前ではないのです。
ローンを組んでやっとの思いで購入した家がこのような症状の引き金にならないように、化学物質を体内にため込まない環境を手に入れるのが大切です。

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心ゆくまで家造りを
楽しんで欲しいのです

家を造り上げるということ

「家」を手に入れる、一言で言っても、それには様々な手段があります。出来上がった家やマンションを購入したり、住宅展示場で見かけた憧れの家を建てたり、アパートに暮らしたり…どれも家を手に入れる手段です。家工房では「住んでみたい家」をお施主様と一緒に考え、それを実現する家造りをすすめます。
家工房の家造りの根幹は、私自身が「こんな家に住みたい」と思い描き、実際にその家を造り上げたという一点です。お施主様においても、そうであって欲しいと思います。
平屋がよい、総二階がいい、といったお話から、それぞれの部屋の間取り、こんな棚があったほうが良いなというお話や、階段の手すりの形、タイルの形状、蛇口の一つ一つまで、家を造り上げる全てをお客様と一緒に決めていきます。
一から十まで全てを決めていきますので、家造りのための打ち合わせの期間を長くとります。その間、数十枚の図面ができあがりますが、この間いくら長い歳月がかかっても、何枚図面を作っても代金をいただくことはありません。家族にあった家造りに打ち合わせは不可欠ですし、本当に家族が住みやすい、お金をかけても惜しくない家づくりのためには、何度も何度も間取りを作り変えていく事は当然必要な作業です。
しかし一般的には、そんな当たり前のことに回数的な制限がかかったり、打ち合わせをするたび費用がかかったり、図面一枚いくら…という代金を払わなければいけなかったりすることがほとんどで、多くの方はこの期間をつい短くしてしまいがちです。このことで満足いくまで打ち合わせができないまま建築が着工し、住んでみて初めて「しまった!」と思うことが多いのです。一生懸命働いてようやく造られる夢の形が、「しまった」と思うものであっていいわけがありません。すべてのお施主様に、私と同じように『本当に造って良かった』と思っていただきたいので、打ち合わせの期間は時間も料金も制限をしないのです。無償でそんなことしていていいのか?と建築屋仲間からよく言われますが、この方法しか本当に満足のいく家造りのお手伝いはできないと思っていますので、今までもこれからも、こうしていきたいのです。
家族の生活にぴったり合った、要望や希望や夢が隅々まで行きわたった家に、失敗があるわけがありません。家造りは初めの打ち合わせで80%以上、善し悪しが決まっているのです。あとは信頼できる職人さんたちが心をこめて、命の通った家を造ります。これで家は完成です。家を造ろうとするすべての皆さんが心から満足できる家造りを、今日も進めて参ります。

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大切な我が家を
数百年先の家族へ。

家を持つ、ということ

たびたび登場する「現代の家」。少し想像をしてみていただきたいのです。その家を建てて、何十年先までその家が存続するでしょうか。数百年後、未来の子孫に、その家を託せるでしょうか。シロアリがわいてしまったり、家の中にカビが繁殖してしまったり、エアコンが壊れたり…さまざまな要因があり、「まさか数百年持つなんてありえない!」、と思うのではないでしょうか。
私たち建築を担う者たちが守る法律の中に『瑕疵の保証を10年しなさい』というものがあります。瑕疵保証とは建てた側の責任において発生した不具合を保証するもので、それが10年なのです。言い換えれば、10年の間は壊れたらいけないよね、と考えられているのが現代の家造りなのです。
一方で、昔建てられた家が『古民家』という名称で現代に残り、住居として使用されているのは良く知られたことです。他にも重要文化財や世界遺産などとして数百年のときを経て、今なお、昔の形そのままの建物が残っているのもご存知だと思います。
現代の家と数百年前に建った家は何が違うのでしょう?その違いでなぜ、寿命が違うのでしょう?それは材料です。具体的には防腐剤で腐らないように加工し、接着剤でくっつけ、断熱材で温度の調整をした家か、木と土だけで造った家か…です。 現存する古いといわれる建物で健全な姿を保っているものは、自然素材の木と土からできています。科学の力によって作られた材料たちは数年から数十年でその役割を終えます。役割を終えているのですからその集合体の家がそれ以上の耐久性を持つはずがないのです。役割を終えた建材の集合体の家は、やがてゴミ化し大量の産業廃棄物となります。次に生を受けることはありません。
では木と土で造った家はどうでしょう?それぞれの材料に耐久年数はありません。生きていて呼吸をしているので、いつまでも朽ちることなく家の中外でその役割を果たし、現存し続けるのです。そうした生きた材料で造られているので建物そのものの耐久年数もまた、無いのです。将来、祖先の建てた家を崩すときが来るとしても、その柱や梁は再利用することが可能でまた長く生き続けるでしょうし、土壁はもう一度水で練り発酵させることでまた壁として生き続けるのです。
人がどれだけ頑張って開発をしても、自然の営みに勝る力は造りえないと思うのです。なぜなら人間も自然の営みによって形成されており、自らその環境になじんで何千年も存続し続けているからです。この60年余り、人類は私利私欲のために家そのものの考えを都合のいいように変えてきました。その計り知れない影響が環境破壊やゴミ問題、ひいては少子化や高齢者の介護問題などを引き起こしてきたといっても過言ではないと考えます。小さな子供のアトピーや喘息、成人病や痴呆・認知症なども化学物質が原因と考えられなくはない、という検査データもあるのだそうです。人の経済的な繁栄のため、本来大切にしなければならないことを人々は忘れてしまったように思います。もう一度人類は60年前の、何もなかったけど豊かだった時代を思い起こす必要があると思います。家はその一部かもしれませんが、人が生きていくうえでもっとも大切なもののひとつです。何十年時が経っていようとも、夏が来たら風が抜け汗をかいた体を冷やし、冬には陽だまりをつくり暖かく過ごさせてくれる昔ながらの家造り。家工房はこれにならい、今までも、これからも、何百年先の子孫が住まうことのできる昔ながらの建て方を忠実に行っています。数十年、数百年先も家を守り続けていくことさえできれば、世代ごとに家を建て直す必要はありません。せっかく造り上げる我が家です、何百年先のご家族も安心して、健康に、快適に住まい続けられる家をご一緒に考えてみませんか。

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我が家が一番快適で癒される、
を当たり前に

自然の中で住まうということ

家が今の形に変化して60年、戦後の高度経済成長期を経て、生活レベルの向上をめざし、家は自然と共存しなくても大丈夫な、とても便利な箱になりました。ボタンをひとつで、快適な風を生み出したり、お風呂に適温の湯を張ったり。ロボットが勝手にお掃除してくれたりもします。そんな、便利で一見快適な生活をさせてくれる家は、本当に人間が生きる上で必要な物だったのでしょうか?60年前にはおそらく考えもしなかった出来事が起こるたび、家のあり方を考えます。
たとえば「エアコン」。私の家にはエアコンがありません。人間4人とうさぎが2羽、亀が2匹…で住んでいますが、真夏の暑い日中も、真冬の凍える寒さの日も、エアコンをかけたことが無いのです(そもそも家の中に一台もないのですが…)。このことだけをとれば単純に好みの問題ととらえがちですが、特にお伝えしたいのが、この家に住みだしてから家族が病気で寝込むことがなくなった、ということです。嫌でも巡る四季の中で、エアコンに頼って涼しすぎる夏をすごせば冬の寒さに弱くなり、そして冬、エアコンやファンヒーターで暖をとることで乾燥が進めば風邪を引きます。小さな子供さんが常に快適な温度に設定された室内で過ごすことは、本来人間の持っている体温の調整機能を失い、病気にかかりやすくなることに繋がるのです。結果、病気がちになり健康な心と身体を育てていかなければならない幼少期を健全に過ごせない、ということになりかねないと思うのです。
では現代の家において、エアコンの無い生活が果たして可能なのでしょうか?もちろん不可能です。平均気温が上昇しているのも事実ですが、それより家そのものの造りが不可能にさせるのです。日本には湿度というどうしても避けられない厄介なものがあります。真夏だけではなく春から秋にかけ日本中を多湿地帯とするのです。反面、冬には空っ風が吹き必要以上に湿度を下げ、乾燥注意報まで出るという四季を通して調整の難しい気候の中で暮らさなくてはなりません。現在の家の中でこれを解決する唯一の方法がエアコンと除湿機と加湿器です。ですからこれらが無ければ生活は成り立たないと言っても過言ではないのです。
しかし、60年前にはできていたのです。土で壁を作り湿気をコントロールし、無垢の木によってさらに体感温度の調整をし、風を意図的に室内に取り込み、室内の気温を下げていました。同じことは現代においても可能なのです。子供を自然の中で昔と同じように健康に育てることが難なくできるのです。便利な生活の裏側で本当に大切にしなければならないものを置き去りにした結果、現代の何の罪も無い子供たちがその影響をうけ健康を害するということが言えるとしたら、「家」そのものをもう少し「便利」から離して考える時がきているのではないかと考えます。
木と土と風の家は決して便利ではありません。夏、布団をかぶって冷えた寝室で寝ることもできません。冬、汗が出るほどの部屋でぽかぽか暮らすこともできません。でもいつも健康で病気もせず、自然と共存し毎日を楽しく生き生き過ごすこと、いつも笑顔いっぱいの子供たちを育てること、そんな当たり前のようで現代のスピード社会では難しいことが簡単にできるのです。
また、近年「癒し」と称し、喫茶店や料亭、旅館…、観光スポット、エステやマッサージなどの施設が大変もてはやされるようになりました。「癒されたい」人がたくさんいるのでしょう。しかし本当の癒しは、日々の暮らしの中でなくてはならないものです。毎日癒されにどこかに出かけていくのは無理があります。会社や学校から帰って家に戻る、その日あった嫌な事や体の疲れを毎日取り除かなければ、嫌な思いや疲れはドンドン心と体に溜まって行きます。これこそ現代人が抱える「ストレス」の原因です。
本来、家は心と体を癒してくれるものでなくてはならないのに、現代の家はかえって「ストレス」を作り出す空間になっているのかもしれません。癒しの空間がこれほどもてはやされるのはここに原因があるからなのではないでしょうか。接着剤や防腐剤などの化学合成の揮発性物質から有害な物質がでることが証明されていますし、科学的に作られた建材や壁紙を見ていると脳内にいらだちを覚える脳波が出ることもわかってきています。エアコンで管理された部屋は自然の風とは違いさわやかな感覚にはなれませんし、コンクリートで固められた庭を見ていても疲れるだけです。たまの休みくらい自然の中に身をおいてのんびりしたい…となるのも不思議ではありません。家そのものがくつろぎの空間ではなくなってしまっているのです。
家はくつろぐ為にあります。本来は家に帰ってホッとし明日への力を蓄える為の場所を造らなければならないのです。木は自らの匂いや手触りで人をリラックスさせてくれる効果を持っています。また無垢の木のまま使うことでマイナスイオンを放出しています。自然の木の肌の木目を眺めていると脳内にアルファー波がでて疲れた脳を安らかにしてくれます。土は常に湿度を調整し人にまったく負担のない空調をしています。庭に植えた木々は見ているだけでのんびりできるでしょう。このように家をくつろぎの癒し空間にすることは難しいことではないのですが、現代の家においてはそうでない場合が多いのです。
自然素材で出来た家で住まうことは、いわば自然の中で住まうことともいえます。そのような暮らしは、住まう人を活き活きと、そして健康にし、そして癒しをもたらすのです。これはほんの数十年前の日本で当たり前に営まれてきた暮らし方ですが、現代においてはきちんと選択していかないとそうならなくなってきてしまっているのです。

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いにしえの技を今に、
未来に

古民家の話

最近『古民家』という言葉を耳にする機会が増えました。 古民家とは築80年程経過して現存する家を言います。この当時建てられた家は機械がないため大工さんが一つ一つ木を山から切り出し建材にして建てています。樹齢をより重ねた木々を使用し、頑丈で地震にもびくともしない家が現代に残っているのです。古い材は数十年の時を経過してなおも強固な材になっており、ただ朽ち果てるのを待つのは非常にもったいないのです。
しかし、このような家には、現代の生活においては「便利でない」点がいくつか存在します。外に風呂とトイレがあったり、台所が土間で、しかも居間と離れていたり。ちょっと聞いただけで使いにくそう…、とか、トイレが外なのは…、とか、土間でしかも家族と離れて一人で家事するの?とか…、使い勝手の悪さが目立ちます。これが原因で家そのものが変わってきたとも言えると思うのです。玄関からの段差をなるべく無くす為に床の高さをさげ、ふすまでしか仕切られない居間をドアと壁で仕切り、お風呂やトイレなどの水廻りを家の中に入れ、家事が家族みんなでしやすいようにLDKを作りました。
確かに使いやすくなりましたが、床の高さを低くしたことで湿気やすくなり土台が腐りシロアリがわく、壁をたくさんつけて仕切ったことで風通しが悪くなりカビや結露の原因をつくる、水廻りや台所を家の中に置くことで水漏れや温度差による結露で見えない床下や壁の中を腐らせる…、といった弊害が起こっているのです。
昔の家は確かに使いにくかったと思いますがそれなりの理屈をもって数百年持つように、健康的に造られていたのです。現代の人々にとって便利になるように手を入れるほど、古民家は朽ちていくことに繋がってしまいます。しかしながら、それぞれの古民家の構造をしっかりと理解し、木と土という自然素材の材料のみを使用し、風を適切に通すことによって、現代の人々にとっても便利で、この先もずっと健全に保つことが出来るようになります。
日本にはまだまだこのような古い家が手付かずのまま残されています。今後はこのような古いものを大切にし、後世に伝えていくことが重要だと思います。家工房はこの残された古民家を先々まで残すために、本物の古民家再生の事業に積極的に取り組んで参ります。

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自然を未来にそのままで

これからの家工房の話

ここ数年、森林で起こる多くの災害をニュースで目にするようになりました。
その昔、家を造るための材料を育てるため使いにくい広葉樹林を伐採し、ヒノキやスギなどの建築材になりやすい針葉樹林に植えかえました。これが現在の多くの日本の森です。この山は人の手が作り出した森なので、人の手が入らなければ死んでしまいます。
本来の森は、広葉樹が冬に葉を落とし、太陽光が地面に届き、落ちた葉はやがて腐葉土となり、山を肥やしました。大きくなった木はしっかり根を張り、大地を守り土砂崩れからふもとの民家を守ってきたのです。
しかし針葉樹は冬でも葉を落とさないので、夏でも冬でもうっそうと茂り、太陽の光を遮断しました。
加えて、葉が落ちないことで山の栄養は無くなり根が張らず、やがて地盤ごと崩れ落ちる大災害を引き起こすようになったのです。針葉樹だけでなく竹の繁茂が広がる地域も多くみられます。竹は地表近くに根を張り、表面を地層のように覆っていきます。そのようになると、ちょっとした大雨でその層ごと滑り落ちてしまうのです。これが山の森林破壊であり、昨今よく目にするようになった土砂災害の要因の一つです。
手を加えなければ生きられないのに人の手が入らないことで災害が起きているのだとすれば、手を加え間伐し、山に太陽の光を通すのが近道なのですが、今の林業は衰退の一途を辿っており間伐さえできない現状があります。国産のヒノキやスギに変わり、海外から輸入される外材とよばれる建材が大量に入ってきた為、国産の材木の需要が激減しました。手間とお金をかけて間伐を行い、ヒノキやスギを育てても売れないという厳しい現状があり、間伐にかけたお金でさえ回収できないという、個人の力ではどうしようもない大きな問題があり、この職業から離れていく方が年々増え続けているのです。多くの建築業者は少しでも利益を増やしたいので、より安く入る外材に建築材のほとんどを頼るようになりました。外材で建てたくないとお客様の希望があったとしても一般的な建築業者はそれを受け入れることは少ないのです。
こうして日本の林業は衰退してきました。お話ししてきた通り、家工房は日本で育った木こそ長年にわたり家を守ってくれる唯一無二の存在と確信しており、その強さと柔軟さは外材ではまかなうことができないと考えます。合わせてこの日本の林業の衰退をなんとしてでも止めたいと思うのです。それは建築資材の生まれる場所を守るという意味と、われわれの生活を守るという意味、二つの重要な意味があります。
木は森を守り、森は人を守る、ほんの少しだけ森の木をいただき家は造られる…、このとてつもなく壮大なリングを壊してはならないと思うのです。
私たちにできることはほんのわずかですが、森を守りたいと思います。
20年以上前に作成したホームページで、「山を手に入れたい。」と述べました。この山は、手付かずの、ありのままの自然の中で、大人と子供が心ゆくまで遊ぶための山です。大根の種を植え世話をすると、やがて大根がなり料理をすれば食べられる。鳥が来て糞をすれば、糞の中の種がいずれ芽生え大きな木になり実をつける。雨が降れば川ができ、のどの渇きを潤す水分が蓄えられる…。そんな単純で壮大な生命の営みを、遊びを通し、心の底から楽しみながら、こどもたちに伝えていきたい。自然の中で生きる心地よさを、未来の地球を担う若い世代へ感じてもらいたいのです。家でくつろぎ自然の中で遊ぶ、そんな当たり前のことが当たり前にできない現代こそ、そんな当たり前で、心の底から楽しいと思える大切な時を過ごしていただきたいのです。そんな経験がかけがえのないものだと感じてもらえたとしたら…この先の生きる道がより良いものになるのではと思うのです。そして今、その思いは現実となり知多半島の南、美浜町に小さな山「風の森」ができました。現代の問題の多くを、「風の森」の自然の中で自然のままに解決に近づけたいのです。この先十年、二十年をかけ、「風の森」がそんな場所になるように、微力ながら日々行動を進めてまいります。

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