土の話 【土壁という断熱材】
住宅には家の中と外の温度を調整する為の断熱材という材料が使用されています、昔というにはまだまだ浅い50年ほど前までの住宅には当たり前のように土壁が使われていましたが、なぜ土壁を使用していたかを知ろうとせず、安価で作業性の良いグラスウールや発泡スチロールにそのほとんどが変わってしまいました。断熱の力だけを図れば数値上は土壁と同等の断熱の力はあるかもしれません、ただ土の力は、断熱する…ということにだけに限らないのです、その力こそ、本来忘れてしまってはいけない日本の建築には無くてはならない力なのです。
ではその力とはどんなものなのでしょう?それは湿度を調整する力なのです、木の話でも述べましたが日本の建築において考えなくてはならない最大の問題、それが湿度です。湿度はエアコンによって調整できると大半の人が知っています。ここでいう湿度は、室内の空気中の湿度、人が常に体感する湿気のことです。考えなくてはならない湿度は、室内の空気中の湿度ではなく、建物の内部、たとえば床下や外壁と内壁の間、天井裏も含めたありとあらゆるところのことです。この場所に湿気がたまると大切な建物の構造材を腐らせ、その腐った部分にシロアリがわき、最終的には家が本来の強度をなくしていきます。
人間が生活していて湿気が多くて嫌だ…と感じる時期にはすでに建物は悲鳴をあげています。なぜなら木は湿気をすうという機能があり吸ったらはかないといけません、しかしこのはいた湿気の行き所が現代の建物には不足しているのです。構造材と隣り合わせにある断熱材は熱を遮断する力はあっても湿気を吸う機能はありません、壁の中や床の下でこの行き所の無い湿気が木を腐らせていくのです。湿気は完全に遮断することができないので、対策をする必要があるのにもかかわらずその対策は全くといっていいほどされていません。しかしそれでも断熱さえできれば良いという考え方は変わらず、湿気についてはふれられていないのです。
私が日本の建築を考えるにつけ、やはり断熱は土壁しかない…と思う理由のひとつです。土壁には当初とんでもない量の水が含まれています、壁として家のそこかしこに施工され人が住むまでの間、少しずつ水分が減り乾燥してゆきます。ただし100%乾燥しきるわけではないので、この土の壁を通気性の無い壁やボードなどで囲うことはできません。あくまでも土壁に対し空気を吸ったりはいたりできる環境が必要です。この状態で人が住みだすと湿気の多い4月から9月までは湿気を吸い、乾燥してくる10月からは自身が吸った湿気をまるで加湿器のように室内に排出します。施工時に大量の水を含み、その水分を乾燥させている為、最初に含んでいた水分量までは湿気を吸い取ることができるのです。
断熱材としての効果は後で述べますが、このような湿度の調整機能をもった断熱材は私の知る限り他にはありません。さらにこの土壁には俗に言う対応年数がありません、使い方を間違わなければ数百年の単位で使用できるのです。なぜなら、木と同じく生きているから…。
日本に見る重要文化財の建物は築300年以上のものが多くありますが、その昔施工された状態の土壁がそのまま残っています。長い年月、息をしながら家とそこに住む人を守ってきたのです。きっとこの先もその役割は変わらず長きに渡り生き続けるでしょう。しかし一般的に言われる断熱材は10年から15年の間に変質しその役目を終えるものもあります、これは湿気が主な原因ですが、悪いことにこの壁の内部は住んでいる方からは見えません。役目を終えて本来の断熱をする、という機能が低下していても気づくことができないのです。
断熱材としての認識しかなくてもいいのです、その機能ははたして壁の内部でどの程度働いているのかを知ってほしいと思います。
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